神谷塾的勉強と受験と子どもの教育
札幌で学習塾を営む神谷が、日々生徒と接しながら考えたことをつづります。おすすめの勉強法や高校・大学受験、教育全般に関する話題を書いていきます。★コメントには必ずお返事します★

プロフィール

神谷英樹

Author:神谷英樹
1962年、愛知県知多郡に生まれる。
1981年、愛知県立半田高校を卒業。
1983年、予定外の2年の浪人生活を終えて、北海道大学に入学。
1988年、北海道大学理学部地球物理学科を卒業、地質コンサルタント会社に入社。浦和市(当時)にあった研究所に勤務。
1995年、どうしても北海道に戻りたくなってその会社を退職。札幌市内の学習塾で講師の職を得る。
2001年、独立開業。屋号を神谷塾とする。
2004年、『新しい科学の教科書』(文一総合出版)の検討委員。
現在、妻と息子2人(小6と小4)との4人家族。ほかに巨大犬が1頭。



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硫化鉄の生成

先日、生徒と一緒に中2理科「化学変化と原子・分子」の問題を解いていました。鉄の粉末と硫黄の粉末の混合物を試験管に入れてガスバーナーで加熱すると、鉄と硫黄が化合して硫化鉄ができます。
   鉄+硫黄→硫化鉄
   Fe + S → FeS

このとき、混合物を加熱し続けるのではなく、一部を加熱して反応が始まると、加熱をやめても反応は続きます。鉄+硫黄の化合のときに熱が出るため、その熱がまた次の化合を引き起こすのです。もともと加熱しなくても水でこねてダンゴにしておけば(つまり、鉄原子と硫黄原子が接触していれば)反応は始まるので、バーナーで加熱するのは最初のきっかけを与えるためということになります。

さて、加熱するその「一部」は、私は原理的にはどこでもいいのだろうと考えていました。ところが、ある出版社の問題集に、「試験管の上部・中部・下部のどこを加熱するか」選べ、という問題があるではありませんか。正解は「上部」なのですが、中部や下部ではいけないという説明がありませんし、私も詰まりました。確かに生徒はそのように教わるし、教科書にもそうあるので、記憶にしたがって上部を選べばいいのでしょうが、それでは理科ではありません。上部を選ぶからにはその理由があるはずで、理由も知らずに上部だと憶えるのはただの“暗記”でしかありません。

私はもともと理科や社会を暗記科目だとするのには抵抗があります。暗記というのはおそらく「わけもわからず記憶すること」で、歌の歌詞とか般若心経をそらんじるのはいいとして、勉強の場面ではしばしば「電話帳を憶える」かのごとき苦役となります。そんなことでは理科も社会もできるようにはなりません。「暗記科目が苦手だ」という子どもは、理科や社会を暗記だと思っているから、いつまでたっても苦手なのだと思います。

さて、上の問題はわけがわからなければまさに暗記を助長する例となってしまうので、私の気が済みません。それで、いつも頼りにしている「新理科教育ML」に質問の投稿をしました。

「鉄と硫黄の混合物を試験管に入れて加熱するとき、なぜ混合物の上部を加熱するのでしょうか」

すると、代表の左巻健男氏(同志社女子大教授)ら化学分野に強い方々から回答をいただきました。整理するとこうです。

1.下部を加熱すると、下部では化合が起きるが、溶けた硫黄が底にたまって化合が中途で終わってしまう。だからといって下部からの加熱を続けると、温度が上がりすぎて試験管が割れる。また、火力を上げてガーッと全体を加熱しようとすると、反応の熱がいちどに発生して危険、ということもある。

2.上部を加熱すれば、溶けた硫黄は下方に流れていくだけなので、反応が中途で止まることはない。

3.なお、バーナーでの加熱をやめても反応が進行する様子を目で見ることができるので、化合によって熱エネルギーが発生し、それが次の反応を引き起こしてゆく様子がよく観察できる。この点でも、上部を加熱する方式は優れている。この方式を開発したのは大竹三郎さんという方(故人)で、1962年のことだそうです。

といったことでした。

ほんとうは自前のラボを持って、自分でいろいろやってみるべきなのです。しかし神谷塾は現在(たぶん今後も)間借りの状態で、火気を使う実験はできそうにありません。物理分野の光とか電気なら、装置さえあればできると思うのですが。自宅の車庫の片隅ででもやろうかなあ。でも冬は寒いだろうしなあ。

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