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神谷塾的勉強と受験と子どもの教育
札幌で学習塾を営む神谷が、日々生徒と接しながら考えたことをつづります。  おすすめの勉強法や高校・大学受験、教育全般に関する話題を書いていきます。  ★コメントには必ずお返事します★

プロフィール

神谷英樹

Author:神谷英樹
1962年、愛知県知多郡に生まれる。
1981年、愛知県立半田高校を卒業。
1983年、予定外の2年の浪人生活を終えて北海道大学に入学。
1988年、北海道大学理学部地球物理学科を卒業、地質コンサルタント会社に入社。浦和市(当時)にあった研究所に勤務。
1995年、どうしても北海道に戻りたくなってその会社を退職。札幌市内の学習塾で講師の職を得る。
2001年、独立開業。屋号を神谷塾とする。
家族は妻と大型犬1頭。息子2人は東京在住。趣味は物理と化学と野球とギターとベース。



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「ミュージック」と言わないで

英単語の発音についてです。…と言うと,日本人なら思い浮かべるのは「 r と l の区別」とかなんとかでしょうが,そんな“高級な”ことではありません。

music see sit student tea

と並べると,たぶん小学校で習得するはずの単語ばかりですが,これらを発音できない中学生が,おそらく少なからずいる。「発音でき」るというのは英語母語話者(ネイティヴ=スピーカー)みたいに,などということでは全然なく,正解共通・実用レベルの「ああ,それはこの単語だな」とわかるレベル。カタカナで表現できるレベルと言ってもいいでしょう。

上の5つは順に,カタカナレベルでは

ミューズィック スィー スィッ(ト) ステューデン(ト) ティー

でいいはずですが,これが中学生たちはできないのです。発音の問題で誤りがあると,確認のために「ちょっと聞かせてくれ」とその子に発音してもらうことがあるのですが,しばしば

ミュージック シー シット スチューデント チー

とやる。

「チー」って,明治の人か!…とツッコミを入れたくなります。「ミュージック」「スチューデント」と言う子はすごく多いですね。この2つは日本語化してから長く,文字が氾濫しているうえ大人がそう発音するので,子供らの耳がそれに慣れてしまっているのかも知れません。そして--「シット」(shit)はうんちのことですから,それは絶対マズイぞ,と忘れずに釘を刺すようにしています。

「ズィ」「スィ」とか「ティ」「テュ」が難しいような(「ミュ」は平気らしい)ので,一緒に声を出して練習させたりもしますが,なかなか改善されません。お前は平成の人だろ。昭和の人(私のこと)だってカタカナレベルでならちゃんと言えるぞ,とまたしてもツッコミを入れたくなります。このレベルの発音を中学生のうちに習得しないと高校以降も変わらず,そのまま大人になってしまって仕事で困る,ということになりそうですし,現に困っている大人も大勢いそうです。

逆を言えば,英語のスピーキングというものは実はカタカナレベルができていればほぼOKなのでは?と私はよく思います。まず脳内で作文できることが最も重要で,あとは「ズィ」「スィ」とか「ティ」「テュ」がそれらしく言えて,さらにアクセントの位置を間違えないこと。たぶんこれで世界中の英語話者とそこそこコミュニケーションできます。



それは英語の問題ではなくて

中学生の英語を見ていると,ただの間違いでは済まない間違いに考え込むことがあります。それは英語がまずいのではなくて,英語とか日本語に限らない根本的なところに問題があると思える。それを書いてみます。

最近経験したもの(昔からよくある)では,こんなのがありました。人称代名詞の目的格(中1)の理解を問うものです。

まず,特に難しくもなんともない問題から。

(1) 回答文の空欄を埋めよ。

Does Ken know her?
  -No. He doesn't know    well. ①
Does Ken know Jane?
  -No. He doesn't know    well. ②
Does Ken know them?
  -No. He doesn't know    well. ③
Does Ken know Jane and her mother?
  -No. He doesn't know    well. ④


正解は

① He doesn't know her well.
② He doesn't know her well.
③ He doesn't know them well.
④ He doesn't know them well.


です。人称代名詞の格変化を憶えてさえいれば,これを難しがる子はあまりいません。話題になっている彼女(ジェーン)や彼女ら(ジェーンとその母)は会話に参加していない。つまり,問答する2人にとって,共通して3人称だからです。

では本題。これはどうでしょうか。

(2) 回答文の空欄を埋めよ。

Does Ken know you?
  -No. He doesn't know    well. ①
Does Ken know you and your mother?
  -No. He doesn't know    well. ②


正解は

① He doesn't know me well.
② He doesn't know us well.


です。今度は,答える人にとっては自分とか自分と母のことですから,「私を」「私たちを」良くは知らない,と答えることになります。これだって難しいはずはなく,正解する子は初めから何の苦労もなく正解しますが,正答率はグッと落ちます。代表的な誤答はこれ。

① He doesn't know you well.
② He doesn't know you well.


こういう問いを形式的に(字面だけ見て)解こうとする子は,you について訊かれているからと,オウム返しに you とするようです。違うよと言われてちゃんと考えれば正解に至るに違いありませんが,多くの子は思考停止して,you じゃなければ your か?などと支離滅裂になっていきます。一度日本語にして考えてごらんと仕向けるのですが,疑問文のほうを日本語にしてみるだけで,回答文を日本語で作ることができず,立ち往生します。

このタイプの子は,上の(1)も形式的に解いている可能性があります。形式的に解けば正解できてしまうので,「わかっていないことがわからない」まま通過してしまうのです。

これは「英文法がわかっていない」のではないですよね。それ以前に,2人の人間が問答する状況とか設定が把握できないのです。この場合,英文法をどんなにあくせく勉強しても解決には遠いように思いますし,教科としての「英語」(それと「国語」)だけの問題でもない気がします。いったい今,どんな世界観で生活しているのだろう?とか,将来仕事をする上で何か困ったことにならないか?と心配で。

私の感触では,この子らはたぶん読書量が足りない。文学的文章(小説や戯曲,随筆)によく触れて,脳内に「状況」を浮かび上がらせる力を養うこと。これが英語の勉強と同等以上に必要ではないかと思います。この話題についてはまた触れるつもりです。



洋楽のすすめ(29) THE BEATLES :A HARD DAY'S NIGHT

(2019年5月27日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)



演奏の模様はたとえばこちらに。

本欄でのビートルズ6曲目は1964年の作品。作詞作曲はジョン=レノンでリードヴォーカルもジョン。★を付したサビの部分だけポール=マッカートニーが歌っている。

ビートルズの忙しい日常をドキュメンタリータッチで描いた同名の映画の表題曲。表題がなかなか決まらず、よって表題曲もできていなかったが、ドラムスのリンゴ=スターが長い映画の撮影を終え "It was a hard day" と言い、夜だったことに気づいて "…'s night" と付け加えたのをジョンとポールが聞いていて、即採用。わずか2~3時間で曲を作り録音を済ませたという。

冒頭の「ジャーン!」というギターの一発は“ロック史上最も有名なコード”と呼ばれている。どうやら Fadd9 らしい(ベース音はD)。

It's been a hard day's night, and I've been working like a dog
It's been a hard day's night, I should be sleeping like a log
But when I get home to you
I find the things that you do will make me feel alright

もう夜なのか きつい一日だった 犬のようにずっと働いていた
本当なら丸太のように眠っているはずだよ
でも 君の待つ家に辿り着けば
君があれこれ尽くしてくれるおかげで疲れも吹き飛ぶんだ

You know I work all day to get you money to buy you things
And it's worth it just to hear you say
you're gonna give me everything
So why on earth should I moan
'cause when I get you alone, you know I feel O.K.

君に好きな物を買ってやるために一日中働いて稼いでるんだけど
君が僕にすべてをくれると言うのを聞けば それも報われるというものだ
だとしたら いったいなぜ不満を抱いたりするだろう
君を一人占めしていると思うだけで 気分は最高なんだからね

When I'm home, everything seems to be right
 When I'm home, feeling you holding me tight, tight

家にいるときは すべてがうまく行っているように思える
家にいるときは 君にギュッと抱きしめられているように感じるのさ

It's been は現在完了形、I've been working は現在完了進行形。現在完 了進行形は「動作」の継続を表すときに使う。ここでは「少し前に終わった動作」で、その影響がまだ明らかに残っている感じを表す。
should は「~のはずだ」と「当然の推量」を表す。
直訳すると「君がしてくれることが僕を気分良くすることがわかる」。
worth it は「それだけの価値がある」。it は前文の内容を指す。
you're gonna~=you're going to~。③の alright(=all right)、⑤の2行後の 'cause(=because)ともども、略表記は試験で書かないこと。
on earth は疑問詞の直後に置いて「いったい(全体)」。
get A…で「Aを…にする」。get you alone で「君を一人にする」となるが、 これでは意味が通じないので上のようにした。
feel A ~ing で「Aが~しているのを感じる」.



洋楽のすすめ(28) BILLY JOEL : MY LIFE

(2019年5月8日発行の『神谷塾だより』に掲載したものに加筆しました)



演奏の模様はたとえばこちらに。

ビリー=ジョエルを取り上げるのは3度目です。今回は1978年のアルバム『ニューヨーク52番街』に収録の曲で、邦題も『マイ・ライフ』。1977年にヒットした『ストレンジャー』に続くこのアルバムは彼にとって初となる全米チャート1位に
輝くもので、「洋楽のすすめ」第16回の『オネスティ』も含めて傑作が多い。彼の全盛期の1枚といえる作品。

Got a call from an old friend
We'd used to be real close 
Said he couldn't go on the American way 
Closed the shop, sold the house,
bought a ticket to the west coast
Now he gives them a stand-up routine in L.A. 


旧い友人から電話が来た 以前とても親しくしていた奴さ
アメリカ流で暮らしていくことはできないから
店をたたみ 家を売り 西海岸への切符を買ったそうだ
今はロサンゼルスでコメディアンをしている

I don't need you to worry for me 'cause I'm alright 
I don't want you to tell me it's time to come home 
I don't care what you say anymore, this is my life
Go ahead with your own life, leave me alone


心配してほしくないんだ 僕は大丈夫だから
そろそろ帰って来いとか言わないでくれ
君が言うことなどもう気にしない これは僕の人生だ
君は君の人生を歩め 僕のことは放っておいてくれ

I never said you had to offer me a second chance
I never said I was a victim of circumstance 
I still belong, don't get me wrong 
And you can speak your mind, but not on my time


二度目のチャンスをくれるべきだなんて君に言った憶えはない
境遇に恵まれなかったとも決して言ってない
今の状況を気に入っているんだよ 誤解しないでくれ
君は君の思うことを語ればいい だが僕の人生に口出しは無用だ

They will tell you you can't sleep alone in a strange place
Then they'll tell you you can't sleep with somebody else
But sooner or later you sleep in your own space
Either way it's okay
You wake up with yourself


人は言う 見知らぬ土地で独りきりでなんて眠れないだろうと
そして次には 誰かと一緒では眠れないだろうと言う
だが遅かれ早かれ そこは居心地のいい場所になる
どちらでも構わない 目覚めるときは自分の力で目覚めるのだから

used to ~ は過去の状態。「以前は~であった(が、現在は~でない)」と 現在との対比を含む。「洋楽のすすめ(26) White Christmas」も参照あれ。
American way は American way of life 。1950年代から米国で指向された、大型乗用車や豪邸、高級家具などの物質的な豊かさを享受する生活様式。go on はここでは「暮らす、うまくやっていく」。
stand-up routine は stand-up comedy (漫談)の routine (日課、いつもの手順)で「漫談の持ちネタ」といったところ。酒場で話術によって観客を笑わせるパフォーマンスのこと。them は L.A. の人々であろう。
need (人) to ~ で「(人)に~してもらう必要がある」。'cause は because の、alright は all right の、それぞれ略表記。試験で書かないこと。
want (人) to ~ で「(人)に~してもらいたい」。it's time to ~ は「~する時間だ」。例:It's time for children to go to bed. 「子供はもう寝る時間だ」
a victim of circumstance を直訳すると「境遇の犠牲者」。
belong は「(あるべき場所に)ある、…にふさわしい」。I belong here. なら「ここが私のいるべき場所だ」。get (人) wrong は「(人)を誤解する」。



英語リスニングをどうするか(3)

間が空いてしまいましたが,リスニング対策の続きです。リスニング以外の問題はよくできていて,つまり英語の基礎力はあって,正真正銘「リスニングだから苦手」という人にお勧めの方法を書きましょう。

これは私のオリジナルでも何でもなく,ディクテーション dictation という,昔からある学習方法です。これを詳しく解説したサイトがたくさんありますので,以下は読まずにそちらへジャンプしてくださって構いません(笑)。長男が大学受験のときに実行していたのを見ていいなと思ったものですが,高校受験であっても極めつけに有効な方法です。

リスニング練習用CDとCDプレーヤを用意します。CDプレーヤは一時停止/再生,できれば“巻き戻し”(CDの場合 何というのでしょうね…)が簡単にできるもの。今時の製品であれば普通の機能だとは思いますが,ここが重要です。

CDでリスニングの練習をするというと,音声を聴いて設問に答えて,答え合わせをする。それで次に行く…とやる人が多いでしょう。でも,それではもったいない。「全部を完全に聴き取る」ことを目指しましょう。そのために「全部書く」のです。

一時停止/再生を繰り返しながら一文ずつ,きっちり書き取っていきます。もちろん,三単現の s ,複数形の s ,冠詞( a , an , the )も含めて完成した英文を書く。フランス語のリエゾンのように単語どうしがつなかっていることがしょっちゅうありますが,それも分解して書く。単語の綴りも間違ってはいけません。そして,一文ずつでいいので原稿と参照して「答え合わせ」をしていきます。

前々回の例文 He stayed there for a week. でしたら,過去形の ed ,前置詞の for ,冠詞の a がポイントです。 for four weeks であれば複数形の s も。期間を表す語句の前に前置詞 for が来ることを当然知っていなくてはなりませんし,理解が曖昧であればここで強烈に認識できます。

文法と単語の知識・理解がなければなかなか一発正解とはなりません。また,大問ひとつ仕上げるだけでもかなりの時間がかかる。効率は悪いでしょう。でも,この間に実力がメキメキついていくはず。この方法に「効率」を求めるのは間違っています。「効率」なんぞより「実力がつく」ほうが何百倍も重要ですよね。

面白くなってきたら,しめたものです(趣味になったりして…)。地道に,楽しくやりましょう。