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神谷塾的勉強と受験と子どもの教育
札幌で学習塾を営む神谷が、日々生徒と接しながら考えたことをつづります。  おすすめの勉強法や高校・大学受験、教育全般に関する話題を書いていきます。  ★コメントには必ずお返事します★

プロフィール

神谷英樹

Author:神谷英樹
1962年、愛知県知多郡に生まれる。
1981年、愛知県立半田高校を卒業。
1983年、予定外の2年の浪人生活を終えて北海道大学に入学。
1988年、北海道大学理学部地球物理学科を卒業、地質コンサルタント会社に入社。浦和市(当時)にあった研究所に勤務。
1995年、どうしても北海道に戻りたくなってその会社を退職。札幌市内の学習塾で講師の職を得る。
2001年、独立開業。屋号を神谷塾とする。
家族は妻と大型犬1頭。息子2人は東京在住。趣味は物理と化学と野球とギターとベース。



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2018年度北海道公立高校入試理科

北海道公立高校入試の理科に出題ミスがあった可能性がある,との記事が2018年3月10日付『北海道新聞』にありました。件の問題は実験結果(といっても机上の計算で作ったもののはずですが)に不備があり,2通りの解答が考えられるというものです。これらについて書いておきたいと思います。理科の大問[5]です。

2018北海道理科5-1
 (道教委HPより)

この「実験1」に関する問1の(2)はこうなっています:
(2) 物体Aの体積は何 cm3 か,求めなさい。 

 「表」を見ますと,「液面から物体Aの下の面までの距離」が 3 cm になったところで「ばねばかりの示す値」が水槽 X,Y のいずれにおいても一定になっています。これは物体Aにはたらく浮力が一定になったからで,上の「距離」が 3 cm になった時点で物体Aの全体が水中に入ったことを意味します。すなわち,物体Aの高さは 3 cm です。実験の冒頭に「立方体」とありますので,物体Aは 1 辺が 3 cm の立方体ということになります。したがって,求める体積は 3 × 3 × 3 = 27 〔 cm3 〕 となりそうです(これが公表された正解)。この問題は頻出問題で,多くの受験生はこのように解いたと思います。

ところが,「アルキメデスの原理」によって浮力から計算すると 27 cm3 にはならない,というのが「出題ミスでは」という指摘の中心です。

アルキメデスの原理:
液体の中で静止している物体にはたらく浮力の大きさは,それが押しのけた体積分の液体の重さに等しい

 (本来,液体中でも気体中でも成り立つ原理ですが,ここでは問題に合わせて液体としました)

バネばかりを使って物体Aにはたらく重力(=重さ)を空気中ではかると 0.80 N ,全部水中に沈めてはかると 0.50 N です。水中では水からの浮力がはたらくのでバネが物体を引く力は空気中よりも小さくていい(楽ができる)わけです。つまり,浮力の大きさは両者の差で 0.80 - 0.50 = 0.30 〔N〕 。 ここでアルキメデスの原理を用いると,物体Aと同体積の水の重さも 0.30 N となります。

さて…

問題文には書かれていませんが, 水の密度は 1 g/cm3 とする…① ことが多い。厳密には温度によって体積が変わり 4 ℃ 付近で最大になるのですが,それは考えない。といいますか,出題者のほうで問題文に「水の密度は 1 g/cm3 とする」と断っておくのが普通です(でないと安心して解答できませんね)。それでも水の密度が 1 g/cm3 であるのは常識といえますし,そう記憶している人が多いでしょう。あとは質量がわかれば体積を求められます。

では質量は?…

これまた問題文には書かれていませんが, 質量 100 g の物体にはたらく重力を 1 N とする…② ことが多い。やや厳密には有効数字 2 桁で 0.98 N ですが,本質的に 1 N とみなして構わない場合が多く,中学理科では普通そうします。でも,出題者のほうで問題文に「質量 100 g の物体にはたらく重力を 1 N とする」と断っておくのが普通です(でないと…以下同じ)。ということで,物体Aと同体積の水の重さ(=重力の大きさ)が 0.30 N ですから,その質量は 100 g × 0.30 = 30 g となります。

以上から,

物体Aの体積 = 物体Aが押しのけた水の体積 = 水の質量 ÷ 水の密度
= 30 〔 g 〕 ÷ 1 〔 g/cm3 〕 = 30 〔 cm3

となってしまうわけです。

アルキメデスの原理を知っている生徒なら,それを使って「確かめ算」を試みるのは自然なことです。問題文に水の密度や重力の大きさの断りがないので,常識的に上の①,②を仮定して計算したでしょう。すると違う結果が出てしまう。混乱したはずです。この確かめ算を試みるくらいの生徒なら理科は満点近く取れるでしょうから心配は無かったと思いますが,同情を禁じ得ません。

ここで新しい疑問が湧いてしまいます。出題者は自分で解いてみなかったのか?検討者は何を検討したのか?

入試問題を作るくらいだから実力のある教師のはず。大問を設計するにあたり,実験内容に矛盾がないよう注意するのはもちろんですが,自分が立てた問に対する解を自分で考え,別解があれば用意するのが当たり前です。そして,同じ問1の(3)はアルキメデスの原理をモロに使う問ですから,ここでも別解として使ってみるのが自然だと思うのですが。

なお,いまさら代案ではありませんが,物体Aを「立方体」ではなく「直方体」とし,問1(2)では「体積」ではなく「高さ」を問うだけであったら,「 3 cm 」で何ら不都合はなかったでしょう。体積が 30 cm3 なので底面積が 10 cm2 となり,矛盾は生じません。

さて,アルキメデスの原理に関しては続きがあります。ここまで長かったので一休みしましょう。よろしければ続きをご覧ください。


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