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神谷塾的勉強と受験と子どもの教育
札幌で学習塾を営む神谷が、日々生徒と接しながら考えたことをつづります。  おすすめの勉強法や高校・大学受験、教育全般に関する話題を書いていきます。  ★コメントには必ずお返事します★

プロフィール

神谷英樹

Author:神谷英樹
1962年、愛知県知多郡に生まれる。
1981年、愛知県立半田高校を卒業。
1983年、予定外の2年の浪人生活を終えて北海道大学に入学。
1988年、北海道大学理学部地球物理学科を卒業、地質コンサルタント会社に入社。浦和市(当時)にあった研究所に勤務。
1995年、どうしても北海道に戻りたくなってその会社を退職。札幌市内の学習塾で講師の職を得る。
2001年、独立開業。屋号を神谷塾とする。
2021年、神谷塾を家庭教師部に一本化。
家族は妻。息子2人は東京に在住。趣味は物理と化学と野球とギターとベース。



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2024年度北海道公立高校入試について

 一昨年・昨年と理科・社会の難度が変動し,理科が難化すると社会が易化したり,またはその逆であったりと,2教科間で難度の調整でもしているのではないかとの疑念を覚えたものだったが,今年は理科も社会もほどよい難度で,国数英を含めて全体に難度が揃っている印象を受けた。来年以降もこの入試が受験生の良い目標となっていくように願いたい。

■国語
 大問[二]は文学的文章(小説など)。昨年は説明的文章(論説文など),一昨年は文学的文章であったから,両者を交互に出すという傾向がはっきりした。昨年も書いたが,2年前までのように説明的文章と文学的文章の両方が大問として出ているほうがバランスは良いのに違いない。両者が交互に出される流れであれば,来年の大問[二]は説明的文章だから公立高対策としては「文学的文章はやらなくていい」などという感心しない事態を招く。
 さらに昨年書いたことを再掲すると,「このアンバランスは実用文の問題が大問で存在するために起こっている。実用文重視の傾向は大学入試“改革”の影響を受けていると思われ,全国的なものであろうし,意図はわからなくもない。ただ,それは小説や論説文を切ってまでやることなのか,また日本語の運用能力を測るということなら小説や論説文に絡めても可能ではないのだろうか,との疑問も湧く。以前のように実用文は小問集合と合体させて大問[一]とし,以下,[二]文学的文章,[三]論理的文章,[四]古典--のようにすべきではないか」
 大学入試“改革”の先陣を切っているのであろう大学入学共通テストでは,昨年も今年も実用文の出題がなかった。実用文がなくとも国語力を測れると判断されてのことではないだろうか。
[一]小問集合。全体に平易。問四の会話は不要な台詞が多く無駄な時間を喰う。
[二]文学的文章。素材は青山文平『本売る日々』(文藝春秋,2023)。文政5(1822)年の本屋の主の一人称視点による物語。江戸時代の話ではあるが会話も地の文も現代と変わりなく読み易い。それでいて内容が軽いということもなく,良い素材だと思う。問二は当時の時刻の表現に関する理解を問うものだが常識的に解ける。問七は昨年に続く新傾向で自由作文的。よく考えれば書くべきことは割合明らかで書き易い。
[三]古典。『蒙求(もうぎゅう)』より,漢文の書き下し文。蒙求は「伝統的な中国の初学者向け教科書である。古人の逸話を集めて韻文で並べた故事集。日本でも平安時代以来長きにわたり読まれた」(Wikipediaによる)。故事成語「断琴の交わり」の由来となる物語で,文章は短く注もしっかり付いているので読解に苦労することはなさそう。
[四]実用文。美術部員の生徒が学校祭で企画展をするために作成したチラシとウェブページに関するもの。札幌の大通公園にあるイサム・ノグチ作の「滑り台」(でもある彫刻)が出ていたり,札幌の生徒には馴染みやすい内容。問三は資料から抜粋してまとめる作業で,説明的文章の問題でよくやるもの。問四は,自分の感想を資料(福岡伸一氏の文章)の内容(の一部)に合わせて書くという,意図のわからない出題。自身の中から湧き出る感想ではなく他者の感想の一部をいただいて改変するようなことをさせられる印象を受ける。

■数学
 オーソドックスな問題のセットで,一昨年・昨年と続いた「予想と説明」はなし。試してみてダメだとわかったらやめる,という態度は潔くて良いが,2年もやったのは失敗であった。
[1]小問集合。配点が一昨年から27点→33点→35点(今年)と増加中。
[2]式と証明。よく見かけるタイプの素材で,しっかり勉強してきた生徒には苦労がなかったであろう。
[3]関数。問1は1次関数の式の導出。この暗算で出てしまいそうなやつをわざわざ記述式で書かせることを北海道ではよくやる。この導出が難しい子はやはり書けないし,暗算で出てしまう子には煩わしいという,悲しい問題。解ける子にはこんなところで時間をかけさせるのはやめて,最終の空間図形の記述をじっくり書けるようにしてやるべきではないか。また問2の「直角二等辺三角形」は2019年に類題が出ている。形式とxの2乗の係数が変わっただけでほぼ同じ問題といえそうなものである。5年置いているが過去問をやっている生徒にはボーナスのような出題。
[4]平面図形。問2は平行四辺形の成立の証明と相似比を使った面積の計算で,ほどよく歯応えがある。ところで問1は設問文に「成り立たない」ものを選べとあるのでアとウを選ぶのだが,思考するうちイの長方形が適当だとわかり,ついイと書いてしまいそうである。長方形だとわかることのほうがおかしな設定の設問に合わせることよりも数学的にはよほど重要なはずだが,この設問の形式は何を意図しているのであろうか。設問をよく読まない子へのペナルティだとしたら,くだらない。ここで惜しくも満点を逃した生徒には同情する。
[5]問1は確率と平面図形の融合。ルールはやや煩雑だが全部で8通りを丁寧にチェックしていけばわりあい短時間で結論が出る。見かけがゴツいのに臆して敬遠しないようにしたい。問2は空間図形で三平方の定理を使う。時間との闘いになるので,要領良く記述するための練習を積んでおきたい。

■英語
 一昨年,昨年と同じく読解問題は大問[3]の[B]と[C]のみであり,かつての裁量問題の[A]に比べると負担は小さい。リスニングや自由作文のウェイトが大きく,歯応えのある英文にじっくり取り組むという要素に不足があるであろう。一見“実用”重視に見えるが,中学英語レベルで“実用”に長けていることは成長後の英語運用能力におそらく大した意味を持たない。中~高難度の英文を前にじっくり思考する大問が欲しい。また3年後の大学入試では,たとえば共通テストで(その是非は置くとして)膨大な量を猛スピードで読まねばならない(リスニングも膨大にあるのだが)ことを考えると,高校入試でのこの軽さが心配になる。リスニングや自由作文の量を減らして1ページを超える長文を課すという方向にできないか。(以上は昨年書いたことを改変して載せました)
[1]リスニング。配点35点は変わらず。問4のNo. 3はいろいろ別解がありそう。
[2]穴埋め形式と自由作文の基礎的な問題。従来通り。
[3]一昨年・昨年と同じく,[A]は表を見て答えるもの。下の注に「保護者と来賓は11時から15時まで」とあるので,問1でウを選ばないように気をつけたい。問3の作文は書くべきことが決まっているので容易。[B]は半ページほどのスピーチ原稿。「ミスを恐れずに話せ」というお馴染みのネタで設問も平易。[C]はnudgeという見慣れない語句に関するもの。環境省のサイトによれば「ひじ等でそっと押して注意を引いたり前に進めたりすること」「特定の決断や行動をするようにそっと説得・奨励すること」(ロングマン英英辞典の定義をまとめたもの)で,どうもSDGsがらみの扱いらしい。本文では交通機関の階段に「ここまで昇ると●●kcal」などと書いてあって歩くよう勧められるというアレである。生徒のプレゼンもなかなか面白い。
[4]自由作文。デジタル版の卒業アルバムというものについての紹介で,生徒が作ってみたという話ではない。(1),(2)は書くべきフレーズや単語が決まっている。(3)で「デジタル卒業アルバムでできること」を2つ書く。First, …/Second, …”という形式で書けばなんとかいけそう。イラストで動画の例が示されているので利用しない手はない。正答例には「ネット上でいつでも見られる」とあるが,だとするといささか危うい代物だという気もする。
 なお,毎年書いているのだが自由作文の採点基準が大甘である。「英語使用の正確さに不十分な点はあるが,表現内容が適切である場合は●点(中間点)とする」というもの。減点法を採るとすぐ0点になってしまうから(せっかく書いたのに?)ということであろうが,内容は大したことなくてもいいからミスのない文を求めるのが入試のありようとしては正しいはずであるし,こんな大甘な採点をしているのは5教科の中で英語のここだけなのである。実際は各高校で個々に採点基準が存在するのに違いないし,そう願いたいものである。

■理科
 一昨年が激易で昨年は「標準」,今年も「標準」であろうか。設問の適切さは置くとして,昨年の化学にあった妙な“仮説”もなく,50分をフルに使う感じになってきたのは良いことである。
[1]小問集合。昨年の問4(遺伝)のような骨の折れるものはなし。エンジンを温めて[2]へ行ける。
[2]生物。ニンニクの芽の成長と細胞分裂。「レポート」によるとニンニクの芽は先端ではなく根本がさかんに細胞分裂をして大きくなるらしい。はじめは逆ではないか?…すわ出題ミスかと疑ったが,調べてみたところ広島県の16年度入試にネギの葉の成長を扱ったものがあり,類似の結果が出ている。ネギもニンニクもヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属で近いのだろうから,疑う必要はないのかも知れない。ただし,08年の北海道ではジャガイモの芽の成長が出ており,こちらでは芽の先端がさかんに細胞分裂をすることになっている。多くの生徒は根の成長をしっかり勉強してきているのだから,この辺りは疑わなくていいということを会話か何かで示しておいてほしいものである。問5は高校生物基礎で扱う細胞周期の問題で,国立や私立の高校では時々見かけるものだが,①が誘導になっているものの教科書の範囲を超えている。出題ミスというほどではないが高校入試として不適切であろう。
[3]化学。水溶液。問1と問2はオーソドックス。問3は,再結晶した分は陽イオンと陰イオンが結合してビーカーの底に沈殿しているように描く,あまり見かけないタイプの作図である。
 ところで,今年こそは出るであろうとダニエル電池やイオン化傾向を一生懸命に勉強した子が多かったとい思うが,またしても…であった。受験生がきっと準備してくるだろうから出してやればいいのに…と私は強く思う。勉強の甲斐があってがんばれたという手応えを味わうのも高校入試ならばいいだろうと思うのだが,いかがであろうか。
[4]地学。台風と気圧。調べてみたところ台風X,Yは2017年の第5号と第18号である。実習2と問2は3地点の観測結果から地点の特定と台風の進路を推定するもので,このタイプの出題としては高難度で類題も見かけない。解けるようには作ってあるのだがお手上げだった生徒も多かろうと思う。ところで問1(3)は「海水面の温度が低い海域に来ると台風が衰える」件をデータから記述させるもので,物理や化学の知識があれば対応はできるものの,台風のところで記述のある教科書は北海道で採択の3社中啓林館1社のみである。つまり教科書によって有利不利が生じている。したがって不適切な出題であった。
[5]物理。5年ぶりに運動とエネルギー。ここはヤマが当たった子が多かったであろう。素材は位置エネルギーの測定で,設定も設問も良いのだが,「木片とレールの間の摩擦力が一定である」ことを断る必要があったはずである。

■社会
 昨年に比べて難化した。生徒にとって初見の資料が多く,解き応えのあるセットであっただろう。
[1]小問集合。地理・歴史・公民の小問が各5題。問3(3)の「企業の社会的責任」がやや分かりづらいか。
[2]歴史。古代から現代までの総合問題で特にテーマはなし。問3は楽市楽座令が信長の勢力下にあった安土のほか岐阜にも出されたことを知っていると安心。問6はアメリカを大西洋憲章,日本を大東亜共栄圏と結びつければよいが,大西洋憲章の知識がないと書きづらく,難しかったであろう。
[3][A]世界地理,[B]日本地理。[A]問3ではイギリスのEU離脱とクロアチアのEU加盟についての知識が必要で,時事問題にアンテナを張っていないと難しい。[B]問3では石灰石をセメントに加工すれば軽量化でき,加工してから運搬したほうが経済的であることを資料から読み取る。ふだんは原材料・燃料を海外から輸入する件ばかり書くので斬新な印象。良い出題だと思う。
[4]公民。政治・経済・国際各分野から。問6は二酸化炭素の排出について意見を書くものだが,英語の自由作文でも定番のテーマなので,苦労せず書けた生徒が多かったであろう。


家庭教師ってなかなか良いですよ その3:国語

国語もまた,家庭教師を始めてから教え易くなったなと感じる教科です。

○読み合わせ
英文の音読が読み方のコツなどの指導に効果があるという件を,この項の第1回で書きました。それが当然国語でもあるわけです。さすがに論説文や小説を一緒に音読することはあまりないのです(黙読するのが基本でしょう)が,古文とか短歌・俳句は一緒に音読してみるべきだと思います。歴史的仮名遣いとか韻文の句切れは音にしてみないと,誤解があればそのままになってしまいます。

○記述式
文章中の言葉を遣って答をまとめる問については,まさに一対一指導が強力です。説明的文章であれば材料を文章から拾えることが多いのですが,文章中の表現そのままではなく,語順を変えたり一言にまとめたりする必要があることもまた多い。私はよく,書く前に一緒に口頭で整理するという方法を採っています。あるいは,解答要件(ポイント)が2つとか3つあって,全部を一発で揃えるのが難しいときには,まず「一言で言えばどうなる?」と促します。一言でなら即答できることも多い。そこから徐々に肉付けしていくことができれば,良い答が出来上がっていきます。それを書く。この方法は当然入試でも使えるので,実戦的と言えます。

○多岐選択式
小中学生は四者択一が多い。どの教科についても,選択肢に○×を付けていくのが有効でしょう。×であればどこが×なのかも指摘する。算数・数学や理科,社会であれば正誤ははっきりさせられますが,こと国語ではスパッと決められないことも多い。そんなときは,(正しいものを選ぶ場合)明らかに誤りなものを初めに“除けて”おいて(つまり×を付けておいて),迷う二つで優劣を考えるのがいいでしょう。「最も適当なもの」に○を付けて答とし,「二番目に適当なもの」には△を付けておく。△であればどこが“惜しい”のかを指摘しておくことも忘れずに。

○なぞり書き
漢字や仮名をスタンダードな形で書けていないときは,私が赤で書いてなぞり書きをさせます。これは英単語でもやっています。これを嫌がらずにやってくれれば私が書くくらいの文字は書くようになります※。また,向かい合わせで見ていると,反対側からでも筆順がヘンなのを発見することも多いです。

※私の書く文字は,まあ「ご心配のないレベル」だと言っておきましょう。



家庭教師ってなかなか良いですよ その2:算数・数学

家庭教師を始めてみたら,塾での個別指導の時代よりも上手くやれていることがある,という話の続きです。前回の英語にも言えることですが,当然ながらマンツーマンで教えているので,生徒がしていることを「生」で見ることができますし,やはり細部まで行き届いたことができます。神谷塾のかつての個別指導は個別とはいえ教師一人(私)に対して生徒が通常は複数だったので,さすがに今ほどは丁寧に,かつ落ち着いてはできませんでした。

細部が大事なのは算数・数学と国語でしょう。特にこれらの教科が苦手で,前学年とか前々学年からの挽回をしなくてはならない生徒さんには,「一対多」よりも「一対一」が合っています。

算数・数学で,たとえば文章題であれば,いきなり筆算を始めないでまず式を立てる。できればカッコを使ってひとつの式に整える。実に,算数・数学の苦手な子はカッコの使い方が身についていないことが多いので,注意のしどころです。次に,計算の規則を使いながら式を変形していく。小6で円周率を使ってやや複雑な図形の面積を求めるところがありますね。これなどは円周率は最後に1回掛ければいいようにしていきます。式変形の書き方には作法があり,これは学校で(特に小学校では)きちんと教わる場面はないらしいのですが,私が教えていれば私がやるくらいには整然と書いていけるようになります。

暗算できるところはすればいいし,むやみに筆算をしていると数の感覚が磨かれないので,むしろ「そこは暗算しようか」と促したりします(これは「一対多」ではできませんでした)。また,筆算も習得すべき学年で習得し損なっているとヘンなことをしている(だから正解できなかった)場合もあるので,よく見ていると発見できたりもします。

基本的に教師(私)と生徒はご家庭のダイニングテーブルなどを使い,向かい合わせでやっています。これは個別指導のころからそうしていました。隣り合わせよりも絶対に見易いのです。隣り合わせだと生徒の手とか髪で作業の様子が見えない部分が生じますが,向かい合わせであれば,慣れさえすれば反対側から読んだり書いてあげたりするのも容易です。

次回は国語について取り上げます。



家庭教師ってなかなか良いですよ その1:英語

雇われ講師として6年強,自分の塾の塾長として20年弱,合わせて26年間塾講師をやった後,家庭教師を始めて現在3年目です。塾と比べて家庭教師のほうが優れていると実感できている点がいくつかありますので,少し書いていこうと思います。まずは英語の話。

塾時代にはなかなかできなかったが家庭教師を始めたら簡単に実現した,ということがあります。英文の読み合わせと対訳です。教科書の文であるとか,ワーク類や道コンの素材文などを一緒に音読する。私が先にひとりで一度読んで聴かせてから,ということもよくやります。細かいことを言えば,例えば多くの中学生が「シ」「ジ」と読む si を「スィ」「ズィ」と読めるようになる。sister をシスター,visit をビジットと読む子がすごく多いはずですが(大人がそうやってカタカナにするのが一因です),スィスタ,ヴィズィッ(トゥ)と英語らしく読めるようになります。また,英文が長くなってくるとどこを固まりとして読み,区切るならどこで区切るかを判断しながら読む必要が生じますが,それも教えられる。固まりにするところを,単語と単語を連結して読むこともできるようになります。結果,私の生徒は私が読むくらいには読めるようになるはずです(※)。

※私が英語をどのくらい英語らしく読んでいるかという点に関しましては「ご心配のないレベル」としておきます。

英部を音読しながら日本語訳もしていきます。英文を読むときいちいち日本語訳などしないものですが,「訳せと言われたら訳せる」ように読んでいかないと,結局意味を正確に取れません。だからせっかく読み合わせをするなら全部日本語にしてみるのです。このとき,フィーリングで訳さないようにする。翻訳コンテストではないのですから,文法を尊重し,英文の構造を押さえた日本語に直します。ごく簡単な例をあげますと,He can play tennis well. は「彼はテニスが上手い」ではなく「彼は上手にテニスをすることができる」とする。

以上のようなことが週に1回でも定期的にできますと,長文への抵抗はなくなっていき,文法や語彙の力がつき,発音やリズムもめきめき上達します。リスニングにも波及効果があるに違いありません。塾という他人の耳がある環境よりも,生徒は気楽に取り組むことができるはずです。



大人もしているかも知れない理科・社会の勘違い(3) マグニチュード

地震国日本ではマグニチュードといえば地震の規模を表す指標ですが,英語の magnitude は単に「大きさ」を表す普通名詞です。ニュースで「『地震の規模を表す』マグニチュードは…」といつも一言断るのはこのためでしょうか。日本の「マグニチュード」に相当する英単語は,最初にマグニチュードを考案したアメリカの地震学者C. リヒターの名を取って Richter scale といいます。

マグニチュードの算出式は地震研究の進展とともに何通りも提案されてきました。多くは地震計で記録された波形の最大振幅をデータとして用いるもので,リヒターの最初の定義がそうですし,現在気象庁の速報値などに採用されている「気象庁マグニチュード」もそのひとつです。地震の波形の振幅は地震波のエネルギーに関係するので,マグニチュードもまた地震波のエネルギーに関係します。

さて--中学生の皆さんが理科でマグニチュードをについて学ぶときしばしば話題になるのは「マグニチュードが○○大きくなるとエネルギーは△△倍になる」という件です。中学生諸君がいま使っている教科書が私の手許に3社分あるので,それぞれにはどう書いてあるかを並べてみますと,

東京書籍『新しい科学1』
「マグニチュードは,値が1大きいと,エネルギーは約30倍,値が2大きいと1000倍になる」(p.217)
啓林館『未来へひろがるサイエンス1』
「マグニチュードが1ふえると地震のエネルギーは約32倍,2ふえると1000倍になる。」(p.82)
教育出版『自然の探求 中学理科1』
「マグニチュードが,0.2大きくなるとエネルギーは約2倍に,1.0大きくなると約32倍に,2.0大きくなると1000倍になる。」(p.203)

と,おおむね同じような書きぶりです。惜しいなと思うのは,各社とも「1000倍」の前に「ちょうど」と付けてくれればいいのに…ということです。なぜ「ちょうど」1000倍になるかは後述します。

それでも「改善されたものだ…」と感慨深いものがあります。以前は「マグニチュードが1大きくなるとエネルギーは約30倍」とか「約32倍」しか書かれておらず,30倍とか32倍の意味が書かれていないので(後述するように1000の正の平方根です),ここからある誤解が発生していました。生徒が誤解するのは仕方ない。しかし指導者は,生徒が誤解しないように教えるか,誤解していたら正さなくてはならないはずなのに,かつては(今も?)一部の指導者まで誤解していました。

つまり,「…ではマグニチュードが2ふえるとエネルギーは何倍になるか」という設問が定期試験に出ていて,“正解”がなんと1024倍。32倍の32倍だからというわけです。「約」1000倍とか,30×30で900倍というのもあったかな。ひどいですね。定期試験だけでなく,塾の教材でも見たことがあります。高校入試でも「約1000倍」を毎年のように見かけます。

出題する人(教師)が誤解していて,というか理科の教師のくせに不勉強で,生徒もそう習ってしまうものだから,“実害”がなかったケースもあるでしょう。しかし,正しく理解している生徒が1000倍と正しく答えるとバツにされたりしていたのです。あってはならないことですが,ありました。札幌市の数校で見かけただけですが,ということは全国では凄い数になっていたのではないでしょうか。当時の私の生徒には「先生に抗議(講義でもいい)しておいで」と勧めたものですが,自分の間違いを認めない,タチの悪い教師の場合は泣き寝入りもあったことでしょう。可哀想に。

ではマグニチュードとエネルギーの関係を書きましょう。マグニチュードの定義は,よく普及しているものだけでも5種類以上あるということですが,おおむねすべてのマグニチュードMがエネルギーEを用いて次のように書けます:
  M=(2/3)log10E+C  ……①
(たとえば井出哲『絵でわかる地震の科学』講談社,p.29)
log というのは高校数学Ⅱで学ぶ「対数」の記号で,下添字で書いた10を「底」といい,log10Eは「10を何乗するとEになるか」を意味します。log10100=2,log101000=3 というわけです。またCは定数です。

①を変形しますと,次のようになります。
  E=10(3/2)(M-C) ……②
さてMが2ふえてM+2になり,EはE’になったとすると,②より
  E’=10(3/2)(M+2-C)=10{(3/2)(M-C)+3}
   =10(3/2)(M-C)×103=E×1000
となるのです。Eのちょうど1000倍になりました。

そして,Mが1ふえると 103/2倍=√1000倍=31.62…倍=約32倍 となります。同様に,Mが0.1ふえると 100.15倍=約1.4倍 ,Mが0.2ふえると 100.3倍=約2.0倍 です。

約32倍の件は,教える現場で「約32って√1000のことなんだよ。√っていうのはね…」と数分くらいで話してあげれば済む話ですし,話すべきだと思うし,中1でも普通に数学がわかる子なら話せばわかります。

それを,「約32倍」の意味をわかろうともしないで,あるいは「教科書に書いてないことを教えてはイカン」などというおかしな信念?でちゃんと教えない,という理科教師がかつては多かったと思います(そんなのは教師ではありませんね)。教科書の記述が改善されたのは,この辺りの状況を踏まえてのことかも知れません。